MESSAGE

働く人からのメッセージ

岡部鈴さん

2020.11.18

(株)電通東日本

勤務

トランスジェンダー当事者

岡部鈴さん

岡部さんは、今は女性として生きていらっしゃるんですよね。

男性として生きてきましたが、2012年にカミングアウトして、それからは女性として生きています。LGBTという言葉が浸透し始めた時代でしたし、私が勤務する電通グループがLGBTについていろんなメディアに訴えていたんですね。LGBTの全人口における割合が発表されたり、有名な経済誌でLGBTの特集が組まれたり。そういう潮流の中で、このまま我慢するべきか女性として生きていくかすごく葛藤して、「男性としてこのまま死にたくない!」という心の中の叫びを全社員へメールしたんです。

すごく勇気が必要だったんじゃないですか。

親会社である電通がそういうスタンスだったら、わたしも大丈夫と思ったんですね。当時の社長が理解のある人で、岡部のことを暖かく見守っていこうじゃないかと役員会で言っていただいたと聞きました。所属する企業、特にマネジメントの態度によって、カミングアウトするうえでの気持ちも、働くうえでの気持ちも違うと思います。

カミングアウトして何か変わったことはありましたか。

わたしはそれまで男性として生きていたので、どちらかというとマジョリティ側の人間だったんです。同性愛の方々の気持ちもわからなかったし、もっと言えば同性愛の人たちに対してテレビで出て来る方のような偏ったイメージしかなかったんです。自分自身がマイノリティの立場になって感じることがたくさんありましたし、いろんな人と知り合うことで学んだこともあります。女性差別の問題、障がい者差別の問題、人種、国籍の問題、全部根っこは同じなんだなと思いました。頭ではわかっていても、それができないのは、それぞれの人の心の問題なんだと思うようにもなってきました。

同性婚についてはどんな風に感じていらっしゃいますか。

トランスジェンダーの人の中には、結婚をしているために性別を変えたくても変えられないという人もいます。二人が愛し合って、男女として籍を入れたけれども、一方が性別のみを変えたいと考えたような場合ですね。同性婚が認められていない日本では、結婚しているパートナーの一方が性別を変える為には離婚しなくてはいけないんです。同性婚を認めたら家族が崩壊するという人もいますが、逆にこんな風に家族の形を壊さざるを得ないひとたちも居るわけです。わたしの友人にも、仕方がないので離婚して、パートナーと養子縁組している人がいます。家族の形を維持するためには、たとえ愛し合っていてもそうせざるをえないんです。

同性婚を実現するために企業はどんなことをすべきでしょうか。

最近は企業も、Diversity & Inclusion を大切にするようになっていますよね。それは重要なことだと思います。新たに就職しようとしている若い学生の立場で見たら、ダイバーシティを体現している企業と、そうでない企業との差は大きいと思うんですね。仮に当事者でなかったとしても、ダイバーシティを実現しようとしている企業のほうが魅力的に感じると思います。そういったことを全面に押し出すことは、企業にとってプラスになることはあってもマイナスになることはないはずです。

現代は、大量生産、価格競争という、昭和のやり方のみでは企業競争に勝てないですよね。他社とどれだけ差別化を図るか、新しいアイデアを生み出していくかが求められています。でも、そんな画期的なアイデアが急に生まれてくることはないんですよ。ましてや社員の自由な発想を大切にしないような企業では、そんなものは生まれないです。会社自体がそういう風土を持って、一人ひとりの個性を尊重していくことが、企業競争に勝つことにつながると思います。また、人それぞれに性格があるように、法人にも性格、カラー、メッセージがあってしかるべきと思うんです。これから入社する学生も、消費者もそんな企業の個性を今まで以上に敏感に感じ取っていくようになると思います。

企業によっては同性カップルへの福利厚生を充実させているところもありますよね。

今のわたしの勤務先では、わたしが働いているという事実が、制度というよりダイバーシティを体現している例になると思います。仕事の出来は別として、わたしが経営企画に携わって働いていることそれ自体、今や社内では誰も違和感はないと思うんです。勿論、制度も大切ですが何より、誰もが違和感なく社会に浸透していけることが必要で、まずは私のような存在が可視化されることが現時点では大事だと思うんです。

同時に、同性婚が認められれば、結婚していない同性カップルの可視化につながるでしょうね。

わたしは、遅くとも20年後には日本でも同性婚は認められていると思うんです。LGBTに関する認識はここ10年で大きく変わりました。世界的にもそういう流れですよね。20年後は認められるんだったら、来年からだって、今日からだっていいじゃないって思うんです。同性婚を認めても誰も不幸にならないし、幸せになる人が増えるだけなんです。反対する理由があるとしたら、変えたくないから変えないという理屈にならないものだけ。ひとりでも幸せになる人を増やすために、同性婚を認める法律を日本で作ってほしいと思います。そして、企業にも婚姻の平等に賛同しますと声をあげてほしい。今なら皆、注目しますよ!と言いたいです。

構成 村山 幸

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