INITIATIVE
企業による取り組み
2025.06.16
HATAful / Business for Marriage Equality
LGBTQフレンドリーな広島を創ろう!企業交流会 in ひろしま

2025年5月12日、広島にて「DE&I担当者による企業交流会」を開催しました。本イベントは広島の企業連携組織「HATAful」と「Business for Marriage Equality(BME)」とが共催。約40名の参加者が集まり、企業・行政による取り組みの紹介などを通じて、LGBTQ+の課題と向き合い理解と連携を深める貴重な機会となりました。

開会あいさつ:木下麻子さん(ひろぎんホールディングス 執行役員 サステナビリティ統括部長)
「自分の子どもたちが“これから好きになる人は、どういう人かは分からない”と言った時、未来に可能性を閉ざさない社会を残したいと思った」──木下さんは、個人の体験を交えながら、LGBTQ+の平等を企業として支援する強い動機を語りました。ひろぎんホールディングスとして、HATAfulとして、多様性を受け入れる文化を育て、広島全体を「誰もが自分らしく生きられる場所にする」ことの重要性を訴えました。そしてこの活動に共感し、ともに推進してくれる広島の企業・ビジネスパーソンを募集していると呼びかけました。

基礎講演①:村木真紀さん(認定NPO法人 虹色ダイバーシティ 代表・理事長)
LGBTQ+の基礎知識を紹介しながら、「見えないだけで職場に必ず当事者はいる」と村木さん。差別を無くすためには、①LGBTQIA+、②SOGIESC、③アライ(ALLY)という考え方を正しく理解することが大切であり、LGBTQ+当事者を支える周囲の理解と行動が不可欠だと説きました。LGBTQ+当事者は非当事者と比べてメンタルヘルスに関する課題を2〜3倍抱えているという研究結果も紹介。カミングアウトのリスク、アウティング(第三者による暴露)の危険性、ハラスメントへの対処が課題となっていることを伝えました。また企業による施策が従業員全体のエンゲージメント向上にも寄与することをデータと共に示し、実践の必要性を訴えました。最後に、差別のない社会の実現に向けて行政・企業・教育の連携の必要性を強調。大阪に設立された「プライドセンター大阪」の紹介も行われ、民間協賛による中高生向けプログラムの重要性にも触れました。

基礎講演②:寺原真希子さん(公益社団法人「Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人に」代表理事)
寺原さんは、現在全国で進行中の「結婚の自由をすべての人に」訴訟と、日本の同性婚(婚姻の平等)に関する動きを紹介しました。同性カップルが婚姻できないことにより、相続や配偶者控除、病院での対応など、さまざまな法的保障が受けられない現実がある。さらに、社会的承認の欠如により、自己否定に陥り、若年層のLGBTQ+の自殺率が高いという実態を「命の問題」として訴えました。国内では多数の違憲判決が出ており、「同性間の婚姻を認めないことは差別」などと明確に判断されているにも関わらず、政府は「注視する」として法改正に踏み出していないことを指摘。「法改正を待つ間に命が失われている。同性カップル用の特別な制度を新たに作るのではなく、今の婚姻制度に同性カップルを包摂する形での婚姻の平等の一日も早い実現が必要」と強く語りました。

事例①:小山健次さん(マツダ株式会社 人事本部 戦略人事部ダイバーシティ推進グループ主幹)
戦略人事部として長年多様性推進に携わってきた小山さんは冒頭で、自社の約2万3,000人の社員の中に、統計的に見ても1,000人以上の性的マイノリティの方がいる可能性があることに触れ、「決して他人事ではない」と強調しました。同社が掲げるパーパスと企業価値に基づき、グループ全体で多様性を推進する取り組みを進めてきた背景を紹介。自社の取り組みやご自身の心の変化、そして性的マイノリティの社員との向き合い方について、実際のエピソードを交えながら語りました。「誰一人取り残さない」という言葉は、理念にとどまらず、現場の対応ひとつひとつに宿るべきだ——そう語る小山さんの姿勢は参加者にも深い印象を与えていました。

事例②:繁松敏宏さん(広島県 環境県民局 わたしらしい生き方応援課 主査)
繁松さんは、「誰もが自分らしく生きられる社会」の実現に向け、県が取り組む性的指向・性自認に関する施策について紹介しました。人権啓発イベント「ヒューマンフェスタ」の開催や企業向けの人権啓発指導者養成研修の実施など、広く県民への理解促進に力を入れています。また、パートナーシップ宣誓制度は県内13の市町で導入されており、県営住宅への入居など県の行政サービス等にも適用を拡大、企業や団体での制度を活用した取組の促進も呼びかけています。さらに、広島県女性総合センター「エソール広島」と連携して、LGBTQ+専用相談窓口の設置や若年層への教育啓発、教員向けの研修にも注力し、「性的マイノリティ等の方々が安心して暮らせる環境をつくるのが行政の役割」と語りました。

さいごに
法制度・職場環境・地域行政それぞれの立場から、LGBTQ+施策は単なる“配慮”ではなく、「一人ひとりが自分らしく生きられる社会を実現するための戦略」だという共通した視点が見えました。誰もが自分らしく生き、働ける社会の実現に向け、広島で活動される皆さまの決意を感じることのできるイベントとなりました。
文・写真:岩村隆行